2016.8.10

「自分より上手い人と演奏することで多くを学ぶ」……ブライアン・トレンティーノ、カレイ・ガミアオのウクレレ・トーク

7月号でレポートしたとおり、6月25日に恵比寿ガーデンホールで行われたカマカ・ウクレレ100周年記念コンサートには、カマカ・ウクレレを愛するプレイヤーたち5組がハワイから集結し、感動のステージを届けてくれました。

そんな彼らにコンサート当日、幸運にもリハーサルや本番の合間をぬってインタビューができたので、ここに紹介しましょう。
IMG_0351リハーサルの合間に話ができたのは、20代の若手プレイヤー、カレイ・ガミアオ。彼はホノルルを拠点にしながら台湾などアジア方面をツアーすることが多く、1年に8カ国を行き来し、今回も前日に到着して翌日には帰るという強行スケジュールでの来日でした。「今夜はとにかく食べられるだけ食べる! 日本は何を食べてもおいしいからね」と、一瞬の東京滞在を満喫する構え。
カレイ・ガミアオの愛用カマカというと、ニュー・アルバム『These Moments』のジャケットに写っている、“KG”のイニシャル入りカスタムメイドのテナー(ボディトップはスプルース、バックはローズウッド)が思い浮かびますが……。
「ジャケットに写っているカスタムメイドのカマカは修理中なので、今回のステージで使うウクレレは、カマカのデラックス・テナー。ボディはトップがシダー、バックがコアのもの。2番目にお気に入りのカマカを日本に持ってきました。テナーが自分にとっては大きすぎず小さすぎず、安心できるサイズ。しかもカマカは鳴りが良く、自分の好きなプレイを響かせてくれる。『These Moments』では、3本のカマカを使い分けていますよ。今作ではアコースティックなインストゥルメンタル音楽にこだわり、これまで多用していたバンド・サウンドを抑えて、11曲中7曲をウクレレ1本のソロ・プレイにしています」
CDでも堪能できる彼のアコースティックな音色はこの日、ホール全体に美しく響き渡っていました。11月には日本でもソロ・ツアーを予定しているとか。

IMG_0749そして、今回のコンサートでクリス・カマカらと共にサイドオーダー・バンドを率いるウクレレの名手、ブライアン・トレンティーノには、コンサート後にロビーで話を聞くことができました。彼もカレイ・ガミアオ同様に2泊3日の短い滞在ですが、「ラーメンも食べたし、今朝は4マイル散歩して、大好きなユニクロにも行った。東京は楽しいね」と気さくな笑顔で会話を弾ませます。
ブライアンは、先日ハーブ・オオタ・ジュニアと共に制作したアルバム『Ukulele Friends』で初めてナホク・ハノハノ・アワードを受賞し、ソロ・アーティストとしてはある意味“遅咲き”ですが、セッション・プレイヤーとしてはこれまで数多くの有名アーティストたちを支え、ハワイ音楽業界で絶大な信頼を得る人物。いわば“ミュージシャンズ・ミュージシャン”なのです。
「これまでに参加したアルバムは40作ぐらい。ナホクを受賞した作品も多数あります。Aaron Sala、Natalie Ai Kamauu、Kuana Torres Kahele、Raiatea Helmなど……ライアテア・ヘルムのCDにはほとんど参加しています。ソロ活動は自分のための音楽作りだけれど、アーティストのサポートには、一緒に音楽を作り上げる喜びがある。ウクレレの弾き方もソロとは違ってくる。しかもぼくはギターやベースも弾き、歌も歌うので、他のウクレレ奏者より幅広い体験でできていると思う」
そんな彼がこの日コンサートで弾いたウクレレは、『Ukulele Friends』のジャケットにも写っているカマカのテナー、スプルース・トップです。
「ぼくのウクレレはユニークなんだよ。なぜならピックアップが、サドル下に取り付けるタイプではなく、4本の各弦にそれぞれ取り付けるタイプだから。これはL.R.Baggs がギター用ピックアップをウクレレ用に作り替えたもので、残念ながら現在は製造していない。これにL.R.BaggsのVenue D.I.を使い、さらにディレイを少しだけかけるとぼくの音色ができあがる」
しかし同じ装備をしたからといって、簡単にブライアンのサウンドになるわけではありません。彼の学習能力と音楽知識から編み出された独特のプレイ・スタイルが、あのハートフルで洗練されたサウンドを作り出すのです。
「ぼくはハワイアンがいちばん好きだけど、いろんなタイプの音楽を聴く。フォークミュージックもジャズも。そしてベニー・チャンのようなジャズっぽいサウンドを出すにはどうしたらいいかと考えたとき、ウクレレの4本弦で、4つの音を出すようにしたらどうか、と。たとえばCコードを弾くとき、通常ならC-E-G-Cというように音は3音しか出さないけれど、ぼくはC-E-G-Aといったように、4音が出るように弾く。これはつまりC6というコードだよね。3声を4声ハーモニーにするわけで、これによってジャズっぽくできる。こういう手法は自分で研究したけれど、ハワイではウクレレを弾く人が周囲に多いので、自分より上手い大人たちと演奏し、実際に聴いて弾くことで多くを学ぶことができたんだよ」
そしてブライアンもまた、カマカ一筋で演奏してきたプレイヤーです。bryan
「ぼくにとってカマカの最大の魅力は音色。まさに本来のウクレレの音色です。次に、上昇しても下降しても明瞭な発音。だからぼくはカマカしか弾かない。両親が初めてカマカのコンサートを買ってくれたときからカマカ一筋で、今やカマカは自分の体の一部だね。コアロハもカニレアもみんな、ぼくのカスタムモデル製作をオファーしてくれるけれど、“すでに自分が満足しているウクレレがあるから、作ってもらってもケースの中で眠っているだけです。ありがとう、でも、ごめんなさい”と言ってお断りします」
ふと彼の右手を見ると、人差し指と中指のツメにはなんとピンクのジェルネイルが(笑)。大切なツメのメンテナンスにも愛嬌ある人柄が溢れていました。

そしてなんと、8月31日には渋谷・トイズミュージックスクールブライアン・トレンティーノのウクレレ・ワークショップが行われます。これは、楽しみ!(取材・構成/松田ようこ)

kaleiamazonbnr_itunesKalei Gamiao
『These Moments』
(2016 Neos Productions)

 

 

Bryan Tolentino & Herb Ohta Jr.ukulele_friends
『Ukulele Friends』amazonbnr_itunes
(2015 Neos Productions)