2016.3.4

スラックキー・ギターの名手ジョン・ケアヴェが語る、故郷ハヴィから生まれる音楽愛〈その1〉

ファイル 2016-03-04 16 38 29ハワイ島コハラ地域にある静かな町、ハヴィ出身のスラックキー・ギタリスト&シンガー・ソングライター、ジョン・ケアヴェ。1970年代から音楽活動を始め、ソロ・アーティストとしても22年のキャリアをもち、グラミーほか数々の音楽賞を受賞してきた彼が、妻でクム・フラのホープ・ケアヴェと、2人の孫娘を伴って来日。
ジョン・ケアヴェとは1998年ハワイ島でのスラックキー・フェスティバルで出会って以来の付き合いとなる“おもさん”こと、スラックキー・ギタリストのおもたにせいじが、2016年1月29日に横浜サムズアップで行われた「スラックキー・ギター・ジャム〜New Year Style 2016」の合間に話を聞きました(左写真は取材風景)。

──ジョンさんと出会って、その後ぼくがジョン・ケアヴェの名前をチェックしたのは、1970年代にハワイのラジオ局KKUAが地元ミュージシャンを募って制作した企画アルバム『Homegrown』でした。1978年に出た『Homegrown Ⅲ』の1曲目に、John Keawe作「Kaauhuhu Homestead」という曲が、Keawe’s Homestead Gangというグループ名で収録されていました。そんな時の流れがあったんだとビックリしました。
「ケアヴェズ・ホームステッド・ギャングは、昔の高校時代の仲間が集まって結成した3人組。ぼくは高校を出てから入隊し、故郷のハヴィに帰ってきたのが1972年、23歳の頃だ。それからスラックキー・ギターに興味をもち、ギャビー・パヒヌイのブラウン・アルバム(正式名称は『ギャビー』)を独学で一生懸命コピーした。徐々に自分のサウンドが出来上がり、初めて自分で曲を作ったのは1977年かな。その頃ホームステッド・ギャングを昔の仲間と結成し、ソング・コンテストがあるから応募したら? と勧められたのが『Homegrown』だった。コンテストは、ラジオ局に送ったデモテープで審査され、選ばれた12曲がアルバムに収録されるというもの。最初の年は最終審査の24曲に残ったけれど、結果は落選。だから翌年もう一度、今度は「Kaauhuhu Homestead」を作って応募したところ、幸運にも『Homegrown Ⅲ』に収録されることが決まった。とても嬉しかったよ。あれが自分の曲作りのきっかけとなった」

john_omo──生まれ育ったハヴィは静かな町、というイメージがありますが音楽的環境はどうでしたか?
「若い頃は、ハヴィにたいした音楽はないと感じていた。スラックキーは幼い頃からそばで誰かが弾いていたけれど、年寄りが地元のハワイアンをオールドスタイルでやっているだけで、それよりもロックンロールだった(笑)。高校時代はロックンロール・バンドをやって、ベンチャーズの「パイプライン」など50年代のサーフ・ミュージックや、ビートルズにローリング・ストーンズ。小学校でウクレレは習うけれど、60年代にビートルズという大きな波がやってきて、みんなウクレレを放り出したね(笑)。当時、ぼくらの高校にはロックンロール・バンドが3つあって、お互いに腕を競い合っていたよ」

──ぼくもそういう世代ですね。でもその高校時代の仲間とホームステッド・ギャングを結成して、スラックキー・ギターを弾くようになったわけですね。
john_hope2「ロックンロールからハワイアンへ方向転換。それがホームステッド・ギャング。軍を出て故郷ハヴィに帰って初めて、スラックキー・ギターの美しさを知ったんだ。ギャビーの音楽に感銘を受けたのもこの頃。5歳年下の妻ホープと出会ったのもその頃で、彼女のことは小学生の頃から知っていたけれど、軍から帰るとティーンエイジャーに成長していた。彼女の父親は弦楽器を何でも弾きこなし、最初にホープと出会ったとき父親のスラックキーの音色にウワーッと引き込まれたのを憶えている。ホープとは73年に結婚した」

──ハヴィに帰郷して、音楽的に心境の変化があった?
「入隊中に、ジェイムス・テイラー、エルトン・ジョン、キャット・スティーヴンス、キャロル・キングらシンガー・ソングライターたちの音楽を聴くようになっていた。彼らの内省的な歌詞が好きで、自分もパーソナルな歌を書くようになり、そんなとき故郷で出会ったのがギャビーのサウンド。自作曲を演奏する楽器として、ぼくはスラックキーを選んだ。曲の組み立て方については、シンガー・ソングライターの影響も大きく受けている」

──『Homegrown Vol.3』以降、生活は変わりましたか?
「ケアヴェズ・ホームステッド・ギャングとしてクラブなどで演奏するようになった。そして1993年からソロに転向し、『Ho’onanea』というスラックキー1本でレコーディングしたインストゥルメンタル・アルバムを発表。初めてナ・ホク・ハノハノ・アワードを受賞したのはこのアルバムだった。“Ho’onanea=ホオナネア”とは平和で穏やかなことの意味だよ。音楽で生計立てられるなんて、自分は本当に幸運だと思う」(つづく)

john_omo_hawaii初めて出会ったときの写真、左はジョン・ケアヴェと孫のナオミ

 

 

 

homegrown3

V.A.(Keawe’s Homestead Gang and others)
『Homegrown  Ⅲ』
(1978 KKUA Records)

 

 

Ho'onaneaJohn Keawe
『Ho’onanea』
(1993 Homestead Productions)

 

 

gabbyGabby Pahinuiamazonbnr_itunes
『Gabby』(通称Brown Album)
(1972 Panini Records)