2015.11.1

90年代以前の、オールドハワイアンの伝統とカバー文化

90年代にハワイアン・ポップス革命が起きる前まで、ハワイ音楽シーンにおける主流はカバー文化でした。それはつまり祖先たちが作った伝統的なオールドハワイアンをカバーして、歌い継ぐということ。「口承で伝えられてきた歌をさまざまな人がカバーするわけです。そうする中で、自分たちなりのアレンジやスタイルが出来上がっていく」と、トイズミュージックスクール主宰・おもさんは説明します。

その中でもコンテンポラリーなスタイルでカバーし注目を集めたのが、ウクレレ&スラックキー・ギター奏者のピーター・ムーンです。60年代後半〜70年代初頭にサンデー・マノアを結成し、ギャビー・パヒヌイの息子らやカジメロ兄弟を輩出、その後は自身のピーター・ムーン・バンドを率いて活動。サンデー・マノア時代に発表した『Guava Jam』は、伝統的ハワイアンに新たなアプローチを見せ、ひじょうに高く評価されました。その本質は、心地良いアコースティックなサウンドです。

また、“イズ(IZ)”の愛称で親しまれたハワイアン・シンガー、イズラエル・カマカヴィヴォオオレ も有名です。70年代から音楽活動を開始し、兄の在籍したマカハ・サンズ・オブ・ニイハウに加入、90年代にはソロに転向、300キロを超える巨体が故に97年に38歳の若さで亡くなりますが、今なお伝説的な人気を誇る優しい歌声のシンガー。彼もまた、マカハ・サンズを通してトラディショナルなハワイアンを継承し、ソロになってからもそのスピリットを重んじ、心癒す歌声でメッセージを放ってきたアーティストです。

「ハワイのミュージシャンは自分のスタイルをひじょうに大切にします。音楽の道を目指すからと言って、オリジナル曲にこだわる必要はない。既存の音楽を自分のアレンジ、自分のルールに置き換えて歌い継ぐ、というカバー文化の素晴らしさをハワイは教えてくれます」(おもさん)

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『Guava Jam』
(1971 Hula Records)

 

 

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『Facing Future』
(1993 Mountain Apple)